1. 導入
「同じお客様の案件が、なぜか別の行にもう一度登録されている」「気づいたら2人の担当者が同じ案件を進めていた」。案件管理表や営業管理表、申請管理表を運用していると、こうした重複登録は意外とよく起こります。
特に、3人〜50人ほどで案件管理表を共有している場合、入力する人によって書き方が違ったり、過去の登録を確認せずに新しい行を追加してしまったりして、同じ案件が複数行に分かれてしまうことがあります。
そのまま気づかずに進めると、別の担当者が同じ案件に着手してしまったり、進捗状況がどの行を見れば正しいのか分からなくなったりします。お客様にとっても、社内にとっても、二重対応はトラブルにつながりやすい問題です。
この記事では、案件番号や受付日と顧客名を使って重複候補を見つけ、同じ案件が複数行に分かれることを防ぐための見直し方を、実務で進めやすい順に整理していきます。
2. この記事で解決すること
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解決する課題 | 同じ案件が複数行に分かれる |
| 主な原因 | 案件番号や受付番号が決まっていない |
| 解決方法 | 案件番号や受付日と顧客名を使って重複候補を探す |
| 対象業務 | 案件管理・営業管理・申請管理 |
| 対象人数 | 3〜50人 |
| 難易度 | ★☆☆☆☆ |
| 作成時間 | 20分 |
| 効果 | 案件の二重対応を防ぎやすい |
| 向かないケース | 案件単位で管理しない表 |
この記事は、管理表を一から作り直すための内容ではありません。今ある管理表に対して、重複候補を見つけられる仕組みを少しだけ加えていく、現場で続けやすい見直し方をお伝えします。作業時間としては20分ほどで、難易度も低めです。
3. なぜその管理表はうまくいかないのか
同じ案件が複数行に分かれてしまう一番の原因は、案件番号や受付番号といった「この案件を一意に識別するためのキー」が決まっていないことです。
キーがないと、入力する人は「この案件、もう登録されているかな?」を顧客名だけで探すことになります。しかし顧客名は、表記ゆれが起きやすい項目です。「株式会社」を前につける人と後ろにつける人、スペースを入れる人と入れない人、略称で書く人と正式名称で書く人。同じ会社でも、検索結果に出てこないことがよくあります。
その結果、「登録されていないようだから新しく入れよう」と判断してしまい、同じ案件が別の行として登録されます。これは入力した人が悪いというより、表に重複を防ぐ仕組みがないことが原因です。
また、複数の担当者が同時に案件を受けるような業務では、受付直後に登録ルールが決まっていないと、お互いの登録が見えず、ほぼ同じタイミングで重複行が生まれることもあります。3人から50人ほどが共有する管理表では、人数が増えるほどこの問題が起きやすくなります。
つまり、重複登録は「確認不足」ではなく、「重複を見つけるためのキーと手順がない管理表」の側に問題があるといえます。
4. 改善手順
ステップ1. 案件を識別するキーを決める
まず、どの項目を使えば「同じ案件かどうか」を判断できるかを決めます。一番分かりやすいのは案件番号や受付番号などの一意の番号ですが、まだ決まっていない場合は、受付日と顧客名の組み合わせをキーにする方法から始めても構いません。完璧な番号体系を最初から作ろうとせず、今ある情報で識別できる形を選びます。
ステップ2. 案件番号の付け方をそろえる
案件番号を新しく導入する場合は、付け方のルールを1行で書ける程度に決めます。たとえば「受付日+連番」のような形です。手入力にすると表記ゆれが起きるため、入力規則やプルダウン、もしくは関数で自動生成できるようにしておくと、入力する人による差が出にくくなります。
ステップ3. 顧客名の表記ゆれを減らす
受付日と顧客名で重複を探す場合、顧客名の表記ゆれがあると正しく見つけられません。よく使う顧客はプルダウンから選べるようにする、株式会社の表記をそろえるルールをコメントで残す、といった工夫で、同じ会社が別の名前で入ってしまう状況を減らします。
ステップ4. 重複候補を見つける列を作る
COUNTIFS関数などを使って、案件番号、または受付日と顧客名の組み合わせが2回以上出てきた行に印が付くようにします。条件付き書式で色を付けるのも有効です。これで、登録時や確認時に重複候補が一目で分かるようになります。
ステップ5. 登録前の確認手順を1つだけ決める
新しい案件を入力する前に、顧客名で検索する、または重複候補列を見る、といった確認手順を1つだけ決めます。手順が多いと守られなくなるため、「登録前に必ずこの1つだけは見る」という形にすると続きやすくなります。
5. Before / After
| 観点 | Before | After |
|---|---|---|
| 課題 | 同じ案件が複数行に分かれて登録されている | 同じ案件は1行にまとまり、重複候補も見つけやすい |
| 原因 | 案件番号や受付番号が決まっていない | 案件を識別するキーが決まっている |
| 運用 | 顧客名だけで過去の登録を探していた | キーと表記ゆれ対策で過去の登録を探せる |
| 確認 | 重複に気づくのは別の担当者が動いた後 | 登録時点で重複候補に色が付く |
| 効果 | 別々の担当者が同じ案件を進めてしまう | 案件の二重対応を防ぎやすい |
キーを決めて重複候補が見える状態にしておくだけで、二重対応の発生をかなり減らせます。完全にゼロにはならなくても、気づくタイミングが早くなることが大きな効果につながります。
6. 実務での注意点
案件単位で管理していない表、たとえば日次の作業ログや活動記録のような表には、この見直し方は向きません。1件ごとに案件として区切れる業務かどうかを最初に確認してください。
また、案件番号のルールを決めるときは、最初から細かい体系にしすぎないことが大切です。部署コードや種別コードを組み合わせた長い番号にすると、入力負担が増え、結局守られなくなります。まずは識別できる最小限の形で始めて、必要になったら項目を追加する流れが続けやすいです。
重複候補列も、いきなり完璧な判定を目指さなくて大丈夫です。COUNTIFSで2回以上出ている行に印を付ける程度の簡単な仕組みから始めて、運用しながら精度を上げていくほうが定着します。
3人ほどの少人数で、案件数も多くない場合は、関数や条件付き書式まで作り込まなくても、登録前に顧客名で検索する運用ルールを共有するだけで足りることもあります。人数や案件数に合わせて、仕組みの強さを調整してください。
最後に、重複が見つかったときに「どちらの行を残すか」「履歴をどうつなげるか」のルールも、簡単で構わないので決めておくと、現場で迷わずに対応できます。
7. Web化・スプレッドシート化との関係
Excel改善で足りる場合
案件管理・営業管理・申請管理の関係者が3〜50人の範囲で、登録するタイミングが分散している、または各自が自分のタイミングで入力しているような運用であれば、Excelの見直しで十分対応できることが多いです。案件番号のルールを決め、COUNTIFSや条件付き書式で重複候補を見える化するだけでも、二重対応はかなり減ります。Excelファイルを共有フォルダで運用していて、大きな混乱が起きていないのであれば、まずは今の形を整える方向で進めて構いません。
スプレッドシート化・Web化を考える場合
複数の担当者が同時に案件を受け付けて入力する業務では、Excelの排他編集が制約になることがあります。同時編集が多い、登録状況をリアルタイムで確認したい、外出先のスマホから受付内容を入力したい、といった要望が強い場合は、スプレッドシートやWebの案件管理ツールへの移行を検討してもよい段階です。承認フローや変更履歴をきちんと残したい場合も、専用ツールのほうが向いています。
ただし、ツールを変える前に、案件を識別するキーを決め、顧客名の表記ゆれを整理しておくことが大事です。この基本整理ができていれば、Excelを続ける場合も別ツールに移る場合も、重複登録への対策がそのまま活かせます。
8. まとめ
同じ案件が複数行に分かれてしまうのは、案件番号や受付番号が決まっておらず、重複を見つける手段がないことが大きな原因です。案件番号や受付日と顧客名をキーにして重複候補を探せる状態に整えると、案件の二重対応を防ぎやすくなり、担当者も安心して登録できる管理表に近づきます。
