導入
申請管理表や契約管理表、問い合わせ管理表で、通常の案件は誰でも進められるのに、「申請者と承認者が同じケース」「期限を過ぎた申請」「複数取引先がからむ案件」のような例外が来た瞬間に手が止まり、特定のベテランが戻るまで処理が止まってしまうことはないでしょうか。
通常パターンは表の運用ルールでカバーできていても、例外時の判断ノウハウは過去に対応した人の頭の中とメール履歴に散っているのが普通です。これは引き継ぎ意識の問題ではなく、例外条件と対応方針が表に紐づいて文書化されていないことが原因です。本記事では、申請・契約・問い合わせ管理を5〜100人で運用している現場を対象に、よくある例外を分類して対応方針を整備する余地があるかを20分で診断する手順を紹介します。
この記事で解決すること
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解決する課題 | 通常処理はできても例外時に止まる |
| 主な原因 | 例外条件と対応方法が整理されていない |
| 診断方法 | 例外事例の棚卸し、分類粒度、対応方針の文書化、表との接続、運用ルールの5観点で確認する |
| 対象業務 | 申請管理・契約管理・問い合わせ管理 |
| 対象人数 | 5〜100人 |
| 難易度 | ★★★☆☆ |
| 診断時間 | 20分 |
| 診断でわかること | 例外整備の着手範囲と、文書化の優先順位 |
| 向かないケース | 例外がほぼない単純業務 |
例外を全部書き出して網羅する内容ではなく、整備の起点をどこに置くかを判断するための診断です。
なぜその管理表はうまくいかないのか
例外対応だけ止まる管理表には、共通した状態があります。
- 過去の例外対応が、担当者の記憶や個別メール・チャットの履歴にしか残っていない
- 例外発生時の判断条件が文書化されておらず、その都度ベテランに口頭で確認している
- 「例外」と「通常処理」の境目が曖昧で、何を例外として扱うかが人によって違う
- 例外用に通常列とは別の運用ルール(メモ書き、別シート、メール添付)ができ、表の中で完結していない
- 同じパターンの例外が再発しても、過去対応の判断結果を再利用する仕組みがない
- 例外パターンの追加・廃止のルールがなく、ベテランの口頭ルールだけが残り続けている
担当者を責めても例外対応は再現できません。例外条件と対応方針が表に紐づいていないことが原因なので、見直しは「いま、どの例外が表に登場し得るか」を切り分けるところから始めます。
診断手順
20分ほどで、5つの観点を順に確認していきます。各ステップで、チェック項目のうち1つでも該当があれば、そのステップを ✗1個 として数えます。
ステップ1. 過去の例外事例を5件以上書き出せるか確認する
直近6か月〜1年の例外対応事例を、関係者にヒアリングしながら書き出せるかを見ます。メールやチャット履歴も検索対象に含めます。
チェック項目: – [ ] 例外事例を5件以上、すぐに書き出せない – [ ] 例外対応の経緯がベテラン1人の記憶にしか残っていない – [ ] メール・チャット・口頭依頼に散っていて、ひとつにまとめられない
判定の目安: チェックが付いた管理表は、例外事例の棚卸しから始める必要があります。書き出せるところから始めるのが現実的です。
ステップ2. 例外を再発頻度の高いパターンに分類できるか確認する
書き出した事例を、再発しやすい5〜10パターンにグルーピングできるかを見ます。
チェック項目: – [ ] 例外をパターンに分類しようとすると、すべてが「特殊ケース」扱いになる – [ ] 同じパターンの例外が、事例ごとに違う名前で呼ばれている – [ ] 「これは例外」と判断する条件が、人によって違う
判定の目安: チェックが付いた管理表は、まず通常処理と例外の境目の定義から決め直す必要があります。
ステップ3. パターンごとに対応方針を1〜2行で書けるか確認する
各パターンについて、「誰が判断するか」「どの選択肢に分類するか」「備考に何を残すか」を1〜2行で書き切れるかを見ます。
チェック項目: – [ ] 対応方針が「ベテランに確認」で止まり、判断条件まで落とせない – [ ] 同じパターンでも、対応した人によって結果が違っている – [ ] 判断の根拠(社内ルール・契約条件・上長判断)が、方針に紐づいていない
判定の目安: チェックが付いた管理表は、判断ルールの合意形成から始める対象です。
ステップ4. 例外パターン一覧を管理表と同じファイルに置けるか確認する
整理した例外パターン一覧を、管理表本体と同じファイル内(別シート等)に置けるかを見ます。
チェック項目: – [ ] 例外パターン一覧の置き場所が、別ファイル・別ドキュメント・メール本文に散っている – [ ] 管理表ファイルだけを引き継いだら、例外対応のノウハウが渡らない – [ ] 例外一覧のメンテナンス担当が決まっていない
判定の目安: チェックが付いた管理表は、例外一覧の保管場所と更新体制から決める必要があります。
診断結果の読み方
ステップ1〜4でいくつ ✗ が付いたかで、次に進むべき範囲を判断します。
✗が0個 → 例外パターン一覧を表に追加するだけで足りる段階 事例の棚卸しも分類も対応方針も体制も整っています。例外パターン一覧シートを管理表ファイルに足すだけで運用に乗せられます。 → 標準ルールと例外を切り分ける手順
✗が1〜2個 → 例外分類と対応方針の整備が必要な段階 事例や方針の一部が固まっておらず、引き継ぎ時に欠落するリスクがあります。例外パターン一覧の整備と、変更ルール・オーナーの設置から進めます。 → 変更ルールと管理表のオーナーを決める手順 → 引き継ぎに必要な列・ルール・手順を洗い出す手順
✗が3〜4個 → 例外運用そのものを設計し直す段階 例外の棚卸し・分類・方針・保管のすべてが崩れています。Excelの例外一覧シート1枚では追いつかないため、運用全体の整備や、必要に応じてツール変更の判断に進みます。 → 管理表の目的・利用者・出力先を棚卸しする手順 → Excel管理表のWeb化を判断する手順
実務での注意点
- 例外がほぼない単純業務(日々の入力が固定で判断不要な業務)には、この診断は不要です。例外整備の運用負荷が効果を上回ります。
- 例外パターンは増やしすぎないようにします。再発頻度の高い5〜10件に絞ったほうが、運用が続きます。網羅を目指すと一覧自体が読まれなくなります。
- 例外と通常処理の境目は最初に決めておきます。「通常処理に該当しないものすべて」とだけ書くと、結局個別判断に戻ります。
- 対応方針を変えた場合は、変更日と理由を一覧に残します。後から「いつから運用が変わったか」を追えるようになります。
- 例外パターン一覧のメンテナンス担当を1人決めておくと、形骸化を防げます。担当不在のまま放置すると、半年で内容がずれます。
まとめ
Excel管理表で例外対応だけ止まるのは、例外条件と対応方針が表に紐づいて文書化されていないことが原因です。次の一歩は、直近6か月の例外事例を5件書き出し、再発頻度の高いパターンにグルーピングしてみることです。整備の方向が見えたら標準ルールと例外を切り分ける手順で境目を定義し、変更ルールと管理表のオーナーを決める手順で更新体制を整えれば、例外時に止まらない最初の枠組みが作れます。

