導入
顧客管理や商品管理、売上管理のExcel管理表で、顧客名や商品名をマスタにまとめず、取引のたびに手で入力していませんか。5〜50人ほどで使う管理表では、入力する人や入力したタイミングによって、「株式会社A」「(株)A」「A社」のように同じ相手の表記がばらつき、後から数えると別の顧客のように見えてしまうことがあります。
同じ情報を何度も手入力していると、表記の揺れだけでなく、住所や担当者が変わったときに直し漏れも起きます。この記事では、顧客名や商品名のように繰り返し使う情報を取引のデータから切り出し、顧客マスタや商品マスタとして分けて持つ管理表の整え方を紹介します。
この記事で解決すること
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解決する課題 | 顧客名や商品名を毎回入力して表記が揺れる |
| 主な原因 | マスタ情報と取引データが混ざっている |
| 解決方法 | 顧客マスタや商品マスタを分けてIDで参照する |
| 対象業務 | 顧客管理・商品管理・売上管理 |
| 対象人数 | 5〜50人 |
| 難易度 | ★★☆☆☆ |
| 作成時間 | 60分 |
| 効果 | 表記ゆれと重複を減らせる |
| 向かないケース | 1つの表だけで完結する業務 |
この記事は、管理表を大きく作り替えるのではなく、繰り返し登場する情報をマスタとして切り出す範囲の内容です。「変わらない情報」と「取引のたびに増える情報」を分ける、という考え方が中心です。
なぜその管理表はうまくいかないのか
顧客名や商品名の表記が揺れるのは、入力する人の不注意ではなく、マスタにあたる情報と取引のデータを同じ表で持っていることが原因です。
顧客や商品の情報は、何度も同じものが登場します。一方、売上や取引の記録は、その都度新しく増えていきます。性質の違うこの2つを1つの表で持つと、登場のたびに同じ情報を書き直すことになります。
そのため、次のような困りごとが起きます。
- 同じ顧客でも入力する人によって表記が変わり、別の顧客に見える
- 顧客名で集計すると、表記の違いで件数や金額が分かれてしまう
- 住所や担当者が変わったとき、過去の行をすべて直す必要が出る
- 商品名のちょっとした違いで、同じ商品の売上が合算されない
- 入力のたびに正しい名称を思い出す手間がかかる
これは入力の丁寧さの問題ではなく、毎回入力しなければならない構造そのものに原因があります。
改善手順
繰り返し使う情報をマスタに分ける手順を、4つのステップに分けて説明します。
ステップ1. 繰り返し登場する情報を見つける
まず、いまの表で何度も同じ値が出てくる列を探します。顧客名、商品名、担当者などが当てはまります。これらがマスタにする候補です。
ステップ2. マスタ表を作る
候補ごとにマスタ表を作ります。顧客マスタなら、顧客IDと正式名称、住所、担当者などを持ちます。1つの顧客が1行だけになるように、重複を整理します。
ステップ3. 取引データはIDで参照する
売上や取引の表からは、顧客名そのものをやめ、顧客IDを入れる形にします。名称はマスタ表側に1か所だけ持ち、必要なときに関数で引いてくる形にします。
ステップ4. 入力をプルダウンで支える
取引データにIDを入力するとき、マスタ表をもとにしたプルダウンで選べるようにします。これで、存在しないIDや表記の揺れた値が入るのを防げます。
Before / After
| 観点 | Before | After |
|---|---|---|
| 課題 | 顧客名や商品名の表記が揺れる | 名称はマスタに1つだけ持つ |
| 原因 | マスタ情報と取引データが混在 | マスタと取引データを分けている |
| 運用 | 取引のたびに名称を手入力 | IDをプルダウンで選ぶだけ |
| 確認 | 表記違いで集計が分かれる | IDで集計するのでぶれない |
| 効果 | 重複と直し漏れが起きる | 表記ゆれと重複を減らせる |
マスタに分けると最初の準備に手間はかかりますが、名称の管理が1か所に集まり、表記の揺れや直し漏れが起きにくくなります。
実務での注意点
マスタ分離を進めるときは、次の点に気をつけてください。
- 1つの表だけで完結する業務には向きません。繰り返し登場する情報がなければ、マスタを分ける必要はありません
- マスタにする項目を増やしすぎないようにします。まずは顧客と商品など、揺れが目立つものから始めます
- マスタ表のIDは、一度決めたら変えないようにします
- 既存データのID振り直しは、直近のものから少しずつ進めると負担が軽くなります
- マスタ表は誰が更新するかを決めておくと、新しい顧客や商品の登録で迷いません
Web化・スプレッドシート化との関係
Excel改善で足りる場合
顧客管理や売上管理が5〜50人ほどの規模で、顧客や商品の数が手で管理できる範囲なら、Excelで顧客マスタや商品マスタを分けて持つだけで十分に運用できます。
スプレッドシート化・Web化を考える場合
マスタを複数の表や部署で共通して使いたい、登録の申請と承認を仕組み化したい、という場合はスプレッドシートやWebの仕組みが選択肢になります。ただしその場合も、マスタと取引データを分ける考え方は同じです。
ツールを変える前に、顧客マスタや商品マスタを切り出して整理しておくと、Excelを続ける場合にも別ツールへ移る場合にも、その整理がそのまま生きてきます。
まとめ
顧客名や商品名の表記が揺れるのは、マスタ情報と取引データが混ざっていることが原因です。顧客マスタや商品マスタを分けてIDで参照すれば、名称の管理が1か所に集まり、表記ゆれと重複を減らせます。
