導入
問い合わせ管理や案件管理のExcel管理表で、備考欄に「対応中/顧客から連絡待ち」「確認待ち(4/15まで)」「完了(4/10送付済)」のように状態を文章で書いていることはありませんか。月次の進捗集計で「対応中の案件件数」を出そうとしても、フィルタや SUMIF が文章セルから状態を拾えず、目視で1行ずつ数えるケースもよくあります。
こうした「状態が備考に埋もれる」問題は、入力者が丁寧に書いていることが悪いのではなく、状態を独立した列として持っていないことが原因です。備考は自由記述だからこそ情報が混ざりやすく、機械的な集計には向きません。
この記事では、備考欄から状態表現を抽出し、専用の状態列を新設して既存データを移す方法を20分で完了させる手順として紹介します。終わったときに、状態別の検索・集計が即座にできる状態になります。
この記事で解決すること
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解決する課題 | 対応中や確認待ちが備考に埋もれる |
| 主な原因 | 状態を列として持っていない |
| 解決方法 | 備考内の状態表現を抽出して状態列を作る |
| 対象業務 | 問い合わせ管理・案件管理・進捗管理 |
| 対象人数 | 3〜30人 |
| 難易度 | ★☆☆☆☆ |
| 作業時間 | 20分 |
| 用意するもの | 対象のExcelファイル/編集権限 |
| 効果 | 状態別に検索・集計しやすくなる |
| 向かないケース | 状態管理が不要な表 |
なぜその管理表はうまくいかないのか
状態が備考に埋もれている管理表には、共通する状況があります。
- 状態を独立した列として持っていない
- 備考欄に「対応中」「確認待ち」「完了」が文章中に書かれている
- 状態だけでなく、日付・担当者・理由・補足もすべて備考に同居している
- フィルタや COUNTIF で「対応中」の件数を取ろうとしても、部分一致でしか拾えず精度が低い
- 「対応中(急ぎ)」「対応中だが要確認」など、別表現が混ざる
- 状態の遷移を機械的に追跡できず、滞留案件の発見が遅れる
これは入力者の書き方ではなく、状態という重要情報が自由記述の中に閉じ込められていることが原因です。見直しは、状態を独立した列として切り出し、選択肢で固定するところから始めます。
完成イメージ
20分後、データ表に状態列が追加され、備考から状態を抽出して移した状態になります。状態列はマスタ参照のプルダウンになり、状態別の絞り込みが正しく動きます。
改善前 — 状態が備考に埋もれる:
| 案件番号 | 顧客 | 担当 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 001 | A社 | 田中 | 対応中、顧客から連絡待ち |
| 002 | B社 | 鈴木 | 確認待ち(4/15まで) |
| 003 | C社 | 田中 | 完了(4/10送付済) |
| 004 | D社 | 佐藤 | 対応中だが要再確認 |
「対応中」でフィルタしても部分一致しか使えず、行001と004は拾えますが状態以外の理由で誤検出も起きます。
改善後 — 状態列と備考列を分離:
| 案件番号 | 顧客 | 担当 | 状態 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 001 | A社 | 田中 | 対応中 ▼ | 顧客から連絡待ち |
| 002 | B社 | 鈴木 | 確認待ち ▼ | 期限 4/15 |
| 003 | C社 | 田中 | 完了 ▼ | 4/10 送付済 |
| 004 | D社 | 佐藤 | 対応中 ▼ | 要再確認 |
状態列で「対応中」をフィルタすれば、行001と004が正確に拾えます。備考には状態以外の補足だけが残ります。
改善手順
20分ほどで4ステップを進めます。
ステップ1. 備考欄に出てくる状態表現を洗い出す
備考欄に書かれている状態を、まず一覧で把握します。
操作: 備考列をフィルタの▼で開くか、状態に該当しそうなキーワード(対応中・確認・完了・差戻し・保留など)を Ctrl+F で検索しながら、出てくる表現を列挙する。
記入例:
| 出現する状態表現 | 件数(概算) |
|---|---|
| 対応中 | 30 |
| 対応中(急ぎ) | 5 |
| 確認待ち | 12 |
| 完了 | 25 |
| 完了(送付済) | 8 |
| 保留 | 4 |
| 差戻し | 3 |
ステップ2. 状態マスタを3〜5個に絞って作る
洗い出した表現を、業務フローに沿った3〜5個の状態に集約します。
操作: 新しいシート「状態マスタ」を追加(既に状態マスタがある場合は参照)。A1に「状態名」、B1に「意味」、C1に「次の遷移先」と入力し、3〜5個の状態を業務フローの順序で並べる。
記入例:
| 状態名 | 意味 | 次の遷移先 |
|---|---|---|
| 未着手 | 受付済だが対応開始前 | 対応中 |
| 対応中 | 担当者が現在対応している | 確認待ち |
| 確認待ち | 担当が完了主張、確認者待ち | 完了/差戻し |
| 完了 | 確認済、クローズ | (終了) |
| 差戻し | 確認で差し戻された | 対応中 |
「対応中(急ぎ)」のような派生は別列(優先度列)で扱うため、状態マスタには含めない。
ステップ3. データ表に状態列を追加し、備考から抽出する
データ表に状態列を新設し、既存の備考から状態を抽出して移します。
操作: データ表の備考列の左隣に1列挿入し、ヘッダーを「状態」とする。状態列を範囲選択 → データ → データの入力規則 → 設定タブで「リストから選択」 → 元の値に =状態マスタ!$A$2:$A$6 を指定 → OK。
次に、既存の備考を1件ずつ確認し、対応する状態をプルダウンから選ぶ。同時に、備考から状態に該当する部分を削除する。
記入例: 抽出ルール
| 元の備考 | 新しい状態 | 残す備考 |
|---|---|---|
| 対応中、顧客から連絡待ち | 対応中 | 顧客から連絡待ち |
| 確認待ち(4/15まで) | 確認待ち | 期限 4/15 |
| 完了(4/10送付済) | 完了 | 4/10 送付済 |
| 対応中だが要再確認 | 対応中 | 要再確認 |
| 対応中(急ぎ) | 対応中 | 急ぎ(優先度高で別列管理を検討) |
✗悪い例: 備考から状態を抽出した後、元の文章をそのまま残す(同じ情報が2列に重複し、片方を更新しても他方が古いまま) / ◎良い例: 状態に該当する部分を備考から削除し、それ以外を残す
ステップ4. 状態列と備考列の役割分担を運用ルールにする
今後の入力で同じ問題が再発しないよう、役割分担を明文化します。
操作: 状態マスタシートの末尾に運用ルールを記入:
状態列の運用ルール:
- 状態列には必ずマスタの5値(未着手・対応中・確認待ち・完了・差戻し)のいずれかを入れる
- 備考列には「状態」を書かない(状態は状態列にだけ書く)
- 備考列には、状態以外の補足(顧客とのやりとり、特記事項、確認した内容など)を書く
- 状態が変わったら、状態列を更新する(備考に「対応中→確認待ちに変更」と書かない)
このルールを管理表の先頭シートに参照リンクとして残す。
✗悪い例: 備考に「対応中になりました」と書く(状態列との二重管理になり、どちらが正しいか分からなくなる) / ◎良い例: 状態列を更新するだけで、備考には状態の変化を書かない
実務での注意点
- 状態管理が不要な表(メモ、ToDo、参考リスト)には向きません。状態列を追加するコストが見合いません
- 「対応中(急ぎ)」のように状態と優先度が混在している場合は、状態列と優先度列を別々に持つ設計にしてください
- 既存の備考の抽出は1件ずつ確認が必要です。一括置換で自動化すると、内容を見ないまま誤抽出するリスクがあります
- 状態マスタが既に共有されている場合は、本記事のステップ2を省略し、共有マスタを参照してください
- 備考に状態以外の重要情報(日付・担当者・理由)が混在している場合は、それらも別記事の方法で専用列に分離すると、備考が「補足だけ」になり整理が進みます
まとめ
「対応中」が備考に埋もれる管理表の多くは、状態を独立した列として持っていないことが原因です。20分で状態列を新設し、備考から状態を抽出してマスタ参照のプルダウンに切り替えるだけで、状態別の検索・集計が正しく動く状態になります。
備考からの分離は、状態以外にも期限・担当者などに広げられます。あわせて以下を参照してください。

