導入
「売上管理」フォルダを開くと、「売上管理_2024年04月.xlsx」と「売上管理_2024年04月_鈴木作業中.xlsx」と「売上管理_2024年04月_田中コピー.xlsx」が並んでいる。どれが他部署に共有していい正本で、どれが個人作業用のコピーなのか、ファイル名だけでは分からない――こんな場面はありませんか。
これは命名の問題ではなく、正本と作業コピーを置く場所が分かれていないことが原因です。本記事では、業務フォルダの中に「正本」専用のフォルダを作り、作業コピーが入り込まない状態にする手順をまとめます。
この記事で解決すること
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解決する課題 | 正本と作業コピーが混ざる |
| 主な原因 | 正本を置く場所が分かれていない |
| 解決方法 | 正本専用フォルダを作りコピーを置かない |
| 対象業務 | 部門共通の管理表全般 |
| 対象人数 | 2〜30人 |
| 難易度 | ★☆☆☆☆ |
| 作業時間 | 15分 |
| 用意するもの | 業務フォルダの編集権限 |
| 効果 | 正本迷子を防げる |
| 向かないケース | 常にクラウド上で1ファイルだけ使う業務 |
業務フォルダ直下に「正本」フォルダを切るだけで、「これが今の正解」のファイルが物理的に分離されます。
なぜその管理表はうまくいかないのか
- 正本と作業コピーが同じフォルダに置かれている
- 「作業中」「コピー」「テスト」などサフィックスはあるが、誰も削除しない
- 個人作業のコピーを共有フォルダに置く習慣になっている
- 「正本」が口頭でしか共有されていない(「○○.xlsxが正本ね」)
- 正本フォルダの編集権限が広すぎる(誰でも上書き可能)
担当者の整理不足ではなく、正本の置き場所が組織として明示されていないことが原因です。見直しは、業務フォルダの直下に「正本」フォルダを切るところから始めます。
完成イメージ
直す前 — 正本と作業コピーが同居:
02_売上管理/
売上管理_2024年04月.xlsx
売上管理_2024年04月_鈴木作業中.xlsx
売上管理_2024年04月_田中コピー.xlsx
売上管理_2024年04月_確認用.xlsx
集計テスト.xlsx
→ 他部署や役員に「最新版を見せて」と言われたとき、どれが正本か即答できない。
直した後 — 正本フォルダを物理分離:
02_売上管理/
README.md
正本/ ← 編集権限を絞る
売上管理_2024年04月.xlsx ← 正本(1つ)
archive/
作業中/
売上管理_2024年04月_鈴木作業中.xlsx
売上管理_2024年04月_田中コピー.xlsx
集計テスト.xlsx
正本フォルダには現役正本だけ。作業コピーは別フォルダで明確に区分。
改善手順
ステップ1. 業務別フォルダの下に「正本」フォルダを作る
各業務フォルダの直下に「正本」フォルダを作ります。
操作: 業務フォルダ(例:「02_売上管理」)の直下に「正本」というフォルダを新規作成する。名前は日本語2文字で統一(半角英語「master」でも可だが、表記を1つに揃える)。
記入例:
02_売上管理/
正本/ ← これを作る
archive/ ← 既存(正本フォルダの中に入れる場合もある)
✗悪い例: フォルダ名を「マスター」「Master」「正本ファイル」と人によって変える → 検索で見つからない ◎良い例: 全業務で「正本」に統一 → 検索一発で正本フォルダが見つかる
ステップ2. 正本フォルダの中身を「正本ファイルのみ」に限定する
正本フォルダに入れていいファイルの条件を決めます。
操作: 正本フォルダのREADMEに「入れていいもの/入れてはいけないもの」を明示する。
記入例:
| 入れていいもの | 入れてはいけないもの |
|---|---|
| 現役の正本ファイル | 作業中の編集コピー |
| READMEなどの説明文書 | テスト用ファイル |
| archiveフォルダ(旧正本の保管) | 「○○_確認用」「○○_検討中」などの仮ファイル |
| – | 個人の作業ファイル |
| – | 他業務のファイル |
入れていいもののリストを明示すると、判断に迷わない。
ステップ3. 正本フォルダのREADMEに役割を明記する
正本フォルダの中にREADMEを置きます。
操作: 正本フォルダ直下にREADME.md(またはREADME.xlsx)を作り、役割・運用ルール・正本更新の手順を記載する。
記入例:
# 売上管理 正本フォルダ
## 役割
売上管理業務の正本ファイルを置く場所です。
このフォルダのファイルは、他部署・役員への共有で参照されます。
## 入れていいもの
- 現役の正本ファイル(売上管理_YYYY年MM月.xlsx)
- 過去の正本(archive/ 配下)
## 入れてはいけないもの
- 作業中ファイル → 「作業中」フォルダへ
- テスト・検討用 → 「作業中」フォルダまたは個人フォルダへ
## 正本更新の手順
1. 「作業中」フォルダで新月分を編集
2. 確認完了後、正本フォルダにコピー
3. 前月分の正本を archive/ へ移動
4. チャットで関係者に通知
## 編集権限
- 編集可: 営業部メンバー(5名)
- 閲覧可: 全社員
- 問い合わせ: 営業部 鈴木
新人でもREADMEを読めば正本運用が分かる。
ステップ4. 既存の混在ファイルを移動する
現状フォルダの中身を、正本と作業コピーに振り分けます。
操作: 業務フォルダ直下のファイルを1つずつ確認し、正本なら「正本/」へ、作業コピーなら「作業中/」へ移動する。
記入例:
| ファイル名 | 判定 | 移動先 |
|---|---|---|
| 売上管理_2024年04月.xlsx | 現役正本 | 正本/ |
| 売上管理_2024年04月_鈴木作業中.xlsx | 作業コピー | 作業中/ |
| 売上管理_2024年04月_田中コピー.xlsx | 作業コピー | 作業中/ |
| 売上管理_2024年04月_確認用.xlsx | 作業コピー | 作業中/ |
| 売上管理_2024年03月.xlsx | 旧正本 | 正本/archive/ |
| 集計テスト.xlsx | 個人テスト | 個人フォルダへ移動 |
判断に迷うものは関係者に確認してから動かす。
ステップ5. 正本フォルダの編集権限を絞る
正本フォルダは、業務担当者だけが編集できる状態にします。
操作: ファイルサーバーやクラウドストレージで、正本フォルダの編集権限を業務担当者に限定する。閲覧権限は広く付与する。
記入例:
| フォルダ | 編集権限 | 閲覧権限 |
|---|---|---|
| 02_売上管理/正本/ | 営業部メンバー(5名) | 全社員 |
| 02_売上管理/作業中/ | 営業部メンバー(5名) | 営業部メンバー |
| 02_売上管理/正本/archive/ | 営業部リーダー(1名) | 全社員 |
archiveの編集権限はさらに絞ると、誤って過去版が書き換わるリスクが減る。
実務での注意点
- 常にクラウド上で1ファイルだけを共同編集する業務(Google Sheets運用など)では、正本フォルダの分離は不要です。
- 正本フォルダの編集権限を絞ると、業務担当者の異動時に権限引き継ぎが必要です。引き継ぎ手順をREADMEに書いておきます。
- 「作業中」フォルダに溜まったファイルは、月1回の棚卸しで削除またはarchive化します。放置すると正本との区別が再び曖昧になります。
- 正本フォルダの中に「正本_v2」のように複数の正本を置かないこと。正本は常に1つだけ。版数管理は版数v01・v02を付ける手順を併用します。
- 業務統合時は、両方の業務フォルダの「正本」を新業務フォルダの「正本」へ統合します。旧フォルダはアーカイブ化して残します。
まとめ
正本と作業コピーが混ざる原因は、正本を置く場所が物理的に分かれていないことです。業務フォルダの直下に「正本」フォルダを作り、入れていいものを明示し、編集権限を絞れば、「これが今の正解」のファイルが一目で分かります。
次にやることは、自分の業務フォルダで「作業中」「コピー」「確認用」などのファイルがいくつあるか数えることです。3つ以上あれば、正本フォルダの分離効果が出ます。あわせて、共有フォルダの集約は共有フォルダの置き場所を1つに決める手順、作業中フォルダの切り分けは作業中フォルダを切り分ける手順も参考になります。

