導入
営業部の案件管理が「営業1課_案件.xlsx」「営業2課_案件.xlsx」「営業3課_案件.xlsx」と課ごとのファイルに分かれていて、全社の案件数を集計しようとすると毎月3ファイルをコピー&ペーストでつなげる作業が必要。集計後に1課で修正があったら、全社集計をやり直す――こんな場面はありませんか。
これは集計作業の効率の問題ではなく、担当別に「ファイル分割」で管理していることが原因です。本記事では、複数の担当別ファイルを1つの表に統合し、「担当」を列として持つ構造に変えることで、集計・比較・引き継ぎを楽にする手順をまとめます。
この記事で解決すること
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解決する課題 | 担当ごとのファイルを集約できない |
| 主な原因 | 担当者をファイルで分けている |
| 解決方法 | 1つの表にまとめ担当列で管理する |
| 対象業務 | 営業管理・案件管理・顧客管理 |
| 対象人数 | 3〜50人 |
| 難易度 | ★☆☆☆☆ |
| 作業時間 | 30分 |
| 用意するもの | 担当別ファイル群/統合先の新ファイル |
| 効果 | 集計・比較・引き継ぎがしやすい |
| 向かないケース | 権限上どうしても分離が必要な業務 |
担当別ファイルを1つの表に集約し、「担当」を列として持たせれば、集計はピボットテーブルで一発、フィルタで担当別に絞り込めます。
なぜその管理表はうまくいかないのか
- 担当者ごとにファイルを分けて作っている
- 各ファイルの列構成がバラバラで、機械的に統合できない
- 集計のたびに3〜10ファイルをコピー&ペーストでつなげている
- 全体の傾向を見るには、毎回手作業で全社版を作る必要がある
- 担当者異動の引き継ぎで、ファイルそのものを引き渡している
担当者の作業スタイルではなく、「担当はファイルで分ける」という古い管理パターンが原因です。見直しは、1つの統合表に集約し、「担当」を列として持たせるところから始めます。
完成イメージ
直す前 — 担当ごとに別ファイル:
営業1課_案件.xlsx:
| 案件名 | 顧客 | 金額 | 進捗 |
|---|---|---|---|
| A社見積 | A社 | 100万 | 提案中 |
| B社契約 | B社 | 200万 | 受注 |
営業2課_案件.xlsx:
| Project | Customer | Amount | Status |
|---|---|---|---|
| C案件 | C社 | 150万 | 確認中 |
営業3課_案件.xlsx:
| 商談 | 取引先 | 価格 | ステータス |
|---|---|---|---|
| D案件 | D社 | 80万 | 完了 |
→ 列名も違うので、機械的に統合できない。
直した後 — 1つの表に「担当」列を追加:
案件管理_統合.xlsx:
| 案件ID | 担当課 | 担当者 | 案件名 | 顧客 | 金額 | 進捗 | 登録日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 001 | 営業1課 | 鈴木 | A社見積 | A社 | 100万 | 提案中 | 2024-04-01 |
| 002 | 営業1課 | 鈴木 | B社契約 | B社 | 200万 | 受注 | 2024-04-05 |
| 003 | 営業2課 | 田中 | C案件 | C社 | 150万 | 確認中 | 2024-04-10 |
| 004 | 営業3課 | 山田 | D案件 | D社 | 80万 | 完了 | 2024-04-12 |
ピボットで担当課別集計、フィルタで担当者別表示が一瞬。
改善手順
ステップ1. 担当別ファイルを並べて共通項目を抽出する
統合の前に、各ファイルの列を突き合わせて共通項目を確認します。
操作: 全担当別ファイルを開き、列名を別シート「列突合表」に並べて書き出す。同じ意味の列を線で結ぶ。
記入例:
| 営業1課 | 営業2課 | 営業3課 | 統合表での列名 |
|---|---|---|---|
| 案件名 | Project | 商談 | 案件名 |
| 顧客 | Customer | 取引先 | 顧客名 |
| 金額 | Amount | 価格 | 金額 |
| 進捗 | Status | ステータス | 進捗 |
| – | 登録日 | – | 登録日(営業1課・3課は補完) |
| 担当 | – | – | 担当者(営業2課・3課は補完) |
意味が同じ列の表記揺れを統合表で1つに揃える。
ステップ2. 統合後の列構成を設計する
統合後の列を「共通列+担当列+補完列」で設計します。
操作: 統合表の列構成を以下のように決める。共通列は全ファイル共通、担当列はファイルから読み取れる情報、補完列は不足を埋める。
記入例:
| 列名 | 区分 | 入力ルール |
|---|---|---|
| 案件ID | 共通(新規) | 連番(001から) |
| 担当課 | 担当 | プルダウン(営業1課・2課・3課) |
| 担当者 | 担当 | プルダウン(担当者マスタから) |
| 案件名 | 共通 | テキスト |
| 顧客名 | 共通 | プルダウン(顧客マスタから) |
| 金額 | 共通 | 数値(円) |
| 進捗 | 共通 | プルダウン(提案中/確認中/受注/失注) |
| 登録日 | 共通 | 日付 |
担当列を「担当課」と「担当者」に分けると、課別集計と担当者別集計の両方ができる。
ステップ3. 各ファイルのデータを統合表へ転記する
決めた列構成に従って、各ファイルのデータを統合表へコピーします。
操作: 統合表(空のテンプレ)を準備し、各担当別ファイルの行を順に転記する。担当列は転記元のファイル名から判定して入れる。
記入例:
| 転記元ファイル | 担当課列に入れる値 | 担当者列に入れる値 |
|---|---|---|
| 営業1課_案件.xlsx | 営業1課 | 各行の「担当」列の値 |
| 営業2課_案件.xlsx | 営業2課 | 「田中」(ファイル全体)または別途確認 |
| 営業3課_案件.xlsx | 営業3課 | 「山田」(ファイル全体)または別途確認 |
転記後、各行の担当課・担当者が正しく入っているか目視確認する。
✗悪い例: 担当列なしで統合 → 誰の案件か分からなくなり、統合の意味が消える ◎良い例: 担当課・担当者の2列を必ず入れる → 統合後も担当別の絞り込みが可能
ステップ4. 集計と表示を担当列でフィルタする
統合表ができたら、担当別の表示はフィルタで切り替える運用にします。
操作: 統合表で「データ→フィルタ」を有効化し、「担当課」「担当者」でドロップダウン絞り込みができる状態にする。
記入例:
| 用途 | 操作 |
|---|---|
| 営業1課だけ見たい | 担当課フィルタで「営業1課」を選択 |
| 鈴木の担当案件だけ見たい | 担当者フィルタで「鈴木」を選択 |
| 全社の月次集計 | ピボットテーブル(行: 担当課、値: 金額の合計) |
| 担当別の進捗集計 | ピボットテーブル(行: 担当者、列: 進捗、値: 件数) |
フィルタを使えば、ファイルを分けなくても担当別に「自分の表」として見える。
ステップ5. 担当別ファイルを廃止しarchiveに移す
統合表が安定稼働したら、旧担当別ファイルは廃止します。
操作: 統合表が1〜2か月安定したことを確認後、旧担当別ファイルをarchiveフォルダへ移動し、共有フォルダから削除する。
記入例:
| 移行ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 並行運用 | 統合表と旧ファイルを1か月併用、データ齟齬がないか確認 |
| 2. 統合表のみ運用 | 翌月から統合表のみ更新。旧ファイルは編集禁止 |
| 3. 旧ファイル退避 | 旧ファイルにREADMEで「廃止」表示 |
| 4. archive移動 | 退避から1か月後、旧ファイルをarchiveへ |
| 5. 棚卸し | archive内の保存期間ルールに従って管理 |
並行運用→廃止の段階を経ると、担当者の抵抗も少ない。
実務での注意点
- 権限上どうしても分離が必要な業務(部門別の機密情報、外部委託先別データなど)では、ファイル分離のままにします。
- 統合表の編集権限は、各担当者が自分の担当行だけ編集できるよう運用ルールで縛ります(フィルタで担当絞り込み→自分の行のみ編集)。シート保護機能で物理的に絞ることも可能。
- 列構成が大きく違うファイル(数十列のずれ)は、いきなり統合せず、まず「共通列だけの統合表」と「担当別の詳細表」の2層構成にしてもOK。
- 統合後、担当者ごとの自由な追加列を許すと、また分裂します。新列追加は管理者承認制にします。
- 統合表の更新タイミングは担当ごとにバラバラでも構いません。「担当者ごとに自分の行を、月末までに更新」のようにルール化します。
まとめ
担当別ファイルが集約できない原因は、「担当はファイルで分ける」という管理パターンに縛られていることです。担当を列として持つ1つの統合表に集約すれば、集計はピボットで一発、フィルタで担当別に絞り込め、引き継ぎもファイル単位ではなく行単位になります。
次にやることは、自部署で「担当者名_業務.xlsx」のように担当者名がファイル名に入っているファイルを数えることです。3つ以上あれば、本記事の統合効果が大きく出ます。あわせて、統合前の棚卸しは担当ファイルを一覧化して棚卸す手順、列構成の突合は共通列を抽出する手順も参考になります。

