導入
顧客管理や営業管理、問い合わせ管理のExcel管理表で、同じ顧客が「田中 太郎」「田中太郎」「タナカ タロウ」のように別表記で複数行に登録されていることはありませんか。月次のアプローチ数を集計したら、本来1人の顧客が3行に分かれていて、結果として優先度や接触履歴の判断を誤ってしまうケースもよくあります。
こうした顧客の重複登録は、入力者のミスではなく、顧客名「だけ」で同一判定をしているために、表記の揺れがそのまま別人扱いになっていることが原因です。氏名は同姓同名・改姓・略称・全角半角の揺れがあるため、氏名単独では判定キーとして弱すぎます。
この記事では、顧客名に加えて「電話番号」と「メールアドレス」を補助キーとして登録し、重複候補を自動表示する方法を20分で完了させる手順として紹介します。終わったときに、新規顧客登録時に同一人物の既存登録を見つけられる状態になります。

この記事で解決すること
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解決する課題 | 同じ顧客が別名で登録される |
| 主な原因 | 顧客名だけで管理している |
| 解決方法 | 顧客名・電話番号・メールアドレスを組み合わせて確認する |
| 対象業務 | 顧客管理・営業管理・問い合わせ管理 |
| 対象人数 | 3〜50人 |
| 難易度 | ★☆☆☆☆ |
| 作業時間 | 20分 |
| 用意するもの | 対象のExcelファイル/編集権限 |
| 効果 | 顧客検索の漏れを減らせる |
| 向かないケース | 顧客管理が不要な表 |
なぜその管理表はうまくいかないのか
顧客の重複が積み上がる管理表には、共通する状況があります。
- 顧客判定が「氏名」だけに依存している
- 同姓同名(田中太郎が2人)を区別する仕組みがない
- 結婚・改姓で「田中 花子」が「鈴木 花子」になったとき、別人として再登録される
- 全角半角の揺れ(田中 太郎/田中 太郎/田中太郎)で同一人物が分裂する
- 「タナカ タロウ」「Tanaka Taro」など別表記が混ざる
- 電話番号やメールが登録されていない、または登録されていても判定に使われていない
これは登録者の入力癖ではなく、判定キーを氏名以外に持っていないことが原因です。見直しは、電話番号とメールアドレスを補助キーとして登録し、3点セット(氏名/電話/メール)のいずれかの一致を「重複候補」として検知できる仕組みを整えるところから始めます。

完成イメージ
20分後、顧客管理表に電話番号列とメールアドレス列が整い、3点いずれかの一致で重複候補が自動表示される状態になります。
改善前 — 氏名だけで管理、同一人物が分裂:
| 顧客名 | 担当 | 受付日 |
|---|---|---|
| 田中 太郎 | 鈴木 | 4/1 |
| 田中太郎 | 鈴木 | 4/8 |
| タナカ タロウ | 佐藤 | 4/15 |
| 田中 花子 | 鈴木 | 4/3 |
3行が同じ田中太郎さんですが、別人扱いになっており接触履歴が3つに分かれます。
改善後 — 電話・メールを併設し、重複検知:
「顧客重複判定ルール」シート(新規追加):
| 補助キー | 用途 | 入力ルール |
|---|---|---|
| 電話番号 | 重複判定の主キー(同じ番号は同一人物の可能性が高い) | 半角ハイフン区切り(例: 090-1234-5678) |
| メールアドレス | 重複判定の補助キー | 小文字・半角に統一 |
| 氏名 | 表示用。判定の補助にも使う | 「姓 名」(半角スペース1個) |
データ表(元のSheet1) — 補助キーを併設:
| 顧客ID | 顧客名 | 電話番号 | メール | 担当 | 受付日 | 重複チェック |
|---|---|---|---|---|---|---|
| K001 | 田中 太郎 | 090-1234-5678 | tanaka@example.com | 鈴木 | 4/1 | OK |
| K001 | 田中 太郎 | 090-1234-5678 | tanaka@example.com | 鈴木 | 4/8 | 重複候補(電話一致) |
| K001 | 田中 太郎 | 090-1234-5678 | tanaka@example.com | 佐藤 | 4/15 | 重複候補(電話一致) |
| K002 | 田中 花子 | 090-9999-0000 | hanako@example.com | 鈴木 | 4/3 | OK |
電話番号で3件の重複が検知され、本来1人の田中太郎さんとして名寄せできました。同姓の田中花子さんは別の電話番号なので別人として正しく扱われます。

改善手順
20分ほどで4ステップを進めます。

ステップ1. 顧客管理表に電話番号・メール列を追加する
既存の顧客管理表に電話番号列とメール列がない場合は追加します。あれば、入力率を確認します。
操作: データ表のヘッダー行を確認。電話番号列がなければ右端付近に「電話番号」列を、メール列がなければ「メールアドレス」列を1列ずつ追加。両方の入力率を =COUNTA(D2:D100)/COUNTA(A2:A100) のような式で算出する。
記入例(入力率の確認):
| 列 | 入力済件数 | 入力率 |
|---|---|---|
| 顧客名 | 100 | 100% |
| 電話番号 | 45 | 45% |
| メール | 60 | 60% |
入力率が低い列は、過去顧客への補完が次のステップで必要になります。
ステップ2. 補助キーの入力ルールを明文化する
電話番号とメールアドレスの入力形式を統一します。形式がバラつくと、補助キーとしての効果が薄れます。
操作: 新しいシート「顧客重複判定ルール」を追加。A1に「補助キー」、B1に「用途」、C1に「入力ルール」と入力。電話番号・メール・氏名の入力ルールを記入する。
記入例:
| 補助キー | 用途 | 入力ルール |
|---|---|---|
| 電話番号 | 重複判定の主キー | 半角ハイフン区切り(例: 090-1234-5678) |
| メールアドレス | 重複判定の補助キー | 小文字・半角に統一 |
| 氏名 | 表示用、補助 | 「姓 名」(半角スペース1個) |
✗悪い例: 電話番号の形式を「ハイフンあり/なしどちらでも可」とする(マッチしなくなる) / ◎良い例: 「ハイフン区切りで統一」と決める
ステップ3. 既存データの電話番号・メールを補完する
入力されていない過去顧客の電話番号・メールを、可能な範囲で補完します。完璧を目指さず、頻度の高い顧客から進めるのが現実的です。
操作: 受付日が新しい順、または接触頻度が高い順に並び替えて、未入力の電話番号・メールを過去のやりとり(メール履歴、名刺、CRMの履歴等)から補完する。1日で全件埋める必要はなく、新規入力分から順次100%にしていく方針でも可。
✗悪い例: 不明な電話番号に適当な値を入れる(重複検知が誤動作する) / ◎良い例: 不明なら空欄のまま、新規入力時に必ず聞くフローに変える
ステップ4. 重複チェック列で3点一致を検知する
データ表の右端に「重複チェック」列を追加し、電話番号・メール・氏名のいずれかが既存と一致した場合に重複候補を表示します。
操作: 重複チェック列の式を以下のように設定(電話番号列がC、メール列がD、氏名列がBとする):
=IF(AND(C2<>"",COUNTIF($C$2:C2,C2)>1),"重複候補(電話一致)",
IF(AND(D2<>"",COUNTIF($D$2:D2,D2)>1),"重複候補(メール一致)",
IF(COUNTIF($B$2:B2,B2)>1,"重複候補(氏名一致)","OK")))
電話番号→メール→氏名の優先順で重複判定する。電話一致が最も信頼度が高い。条件付き書式で「重複候補」を含むセルに背景色を付ける。
記入例: 設定後
| 顧客名 | 電話番号 | メール | 重複チェック |
|---|---|---|---|
| 田中 太郎 | 090-1234-5678 | tanaka@example.com | OK |
| 田中 太郎 | 090-1234-5678 | tanaka@example.com | 重複候補(電話一致) |
| 山田 一郎 | 090-9999-0000 | yamada@example.com | OK |
✗悪い例: 氏名一致だけで判定する(表記ゆれを拾えない/同姓同名を見落とす) / ◎良い例: 電話・メール・氏名の3段階で判定し、優先順位を明示する
実務での注意点
- 顧客管理が不要な表(社内タスク管理など)には向きません。電話・メールの整備コストが見合いません
- 電話番号は半角ハイフン区切りに統一してください。スペース有無や全角半角混在では一致判定ができません。前提としてスペース入力ルールと全角半角統一を整えておくと安定します
- メールアドレスは小文字に統一してください。
tanaka@example.comとTanaka@example.comは実際には同じアドレスです。ステップ2で「LOWER関数で小文字化する」を運用に組み込むと安定します - 重複候補は「同一人物の可能性が高い行」を示すだけで、自動削除はしません。必ず人が内容を確認してから統合・削除してください
- 電話番号やメールが個人情報のため、共有時のアクセス権限に注意してください。本記事の対象範囲外ですが、別途権限設計が必要です

まとめ
同じ顧客が別名で登録される問題の多くは、顧客名「だけ」で判定していることが原因です。20分で電話番号とメール列を整備し、3点(電話/メール/氏名)のいずれかの一致で重複候補を検知する仕組みを作るだけで、新規登録時に既存顧客に気づける状態になります。
顧客の重複対策とあわせて、判定キーの基本である「重複判定キーの決め方」を理解しておくと、案件・契約など他のデータでも同じ手法を応用できます。あわせて以下を参照してください。

